屋久杉(やくすぎ)は、屋久島の標高500メートル以上の山地に自生する杉で1000年以上のものを指します。
日本では長寿の象徴であり、とりわけ西日本で人気があります。
東の島桑、西の屋久杉と人気を二分している日本の銘木の代表といえるでしょう。
ところで、一般的に針葉樹では家具を作ることは少ないです。
「吉蔵」でも、使用する家具は広葉樹がほとんどで、針葉樹の杉を使用している家具はありません。
しかし、同じ仲間である屋久杉は家具の銘木と言われているのはなぜでしょう?
比較的軽く、柔軟な針葉樹は、建築の世界が主な活躍の場。
重厚な木材が適している家具には、広葉樹が圧倒的に多く使われています。
しかし、栄養の少ない花崗岩の島で長い時間をかけてゆっくり育った屋久杉は、年輪が緻密で美しく、圧縮、引っ張り、曲げの強度が他の杉より高いのです。
他の杉と比較し、濃い肌色、強い香りが特徴。また樹脂が多くその為腐りにくく虫にも強いと言われています。
強度と美しさと適正を兼ねそろえた屋久杉は、家具づくりの貴重な材料となるのです。
この貴重な屋久杉ですが、実は2001年に伐採禁止となり、その後2019年には入札者のみに許されていた競り自体も禁止となり、現在入手不可能の木材となっています。
但し、昔伐採され、山に野放しになっている屋久杉は使ってもよいとされ、現在商品となり販売されています。
「吉蔵」では先代から屋久杉の丸太や突き板を所持しており、今回厨子「久音」に使用された屋久杉材は、50年以上前から弊社にあった歴史ある逸品です。
5年前製材所に持ち込み、四方40cm長さ90cmの角材を柾目に取り、厚さ36mmに挽きました。
製材所の大将は木目の細かさに驚き、「これは正真正銘の屋久杉だ。」と言った事を覚えています。
そしてこの度、吉蔵の100周年を記念して、この貴重な屋久杉材を使用した厨子「久音(くおん)」を作成しました。
デザインは島桑材の「世音(ぜおん)」と同じ。扉が両側板の中に収まる引き込み戸が特徴。
島桑材が定番の「世音」を屋久杉材で製作するきっかけは、「世音」を納めている仏壇屋さんから「世音の形を屋久杉材で欲しいお客様がいる」と特注を頂いたこと。
素材と形が合うか不安でしたが、出来上がってみると屋久杉材の清潔さが引き立って美しい厨子となりました。
限定で2台製作。久音は仏器膳付きです。
この度ネットショップと、本日よりスタートする静岡伊勢丹「指物吉蔵」展にて展示販売いたします。
100周年を迎えた「吉蔵」から見ても、1000年以上を生きた屋久杉は、まさに大先輩。
先輩の力をお借りして、上品な中に素朴な温かみを感じる、魅力的な家具が完成しました。
屋久杉本来の素材の良さを生かす為、シンプルな塗装で仕上げてあります。
余った屋久杉材は、もちろん大切に保管してあります。
残り少なくなった貴重な銘木で何を作ろうか、今からワクワクしています。
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