三越展示会搬出の日。 閉店時間(午後7時)までには間があるので、前からみたかった 大正時代の家具デザイナー「森谷延雄」氏の展覧会へ行ってきました。
森谷延雄(1893-1927)
関東大震災を境に大正・昭和を駆け抜け、モダニズムあふれる個性的な家具を発表。
・室内が美しい詩を物語ってくれる家具を作ること。
・貴族の奢侈品でなく、中流家庭のための上質な普及型洋家具を作ること。
・日本における西洋型暮らしを勧めるべく、西洋家具史を研究すること。
上記の3つの夢を、わずか33年の命のなかで成し遂げた。
大正デモクラシーの文化が生んだ、詩人のような家具デザイナー。
玩具やお伽話のすきな子供心の私には、
其のお姫様の室を作って見たくなったのです。
ネムレ、ネムレ、の歌のまゝに。
飽食の時代の、雑貨な頭からは決して生まれない、純粋なデザインのチカラ。
雑念が消え、不安が解かれ、汚れなき世界に引き込んでいく家具の魔力。
鳥影が映る日本紙の張られた障子に春の光が當たっております。
影をなゝめになげかけた小鳥が、
長押の枝の上に憩っております。
自分の命と愛の全てを、家具に捧げてしまった男。
ビジネスなんて言葉のかけらも聞こえてこない、桃源郷を家具で表現した男。
もし三々九度の盃を載せるあの朱色の臺で食事を取ったら
一体どんな気持がするだろうか」という遊戯心。
小さい歌の気持でさう云ふ食事室を作って見度く成ったのです。
夢見る頃を過ぎても、夢見る男の残り香が漂っている、森谷延雄の家具の世界。
もうこれは、趣味としての家具の真骨頂。
そうなんですよね。
これって家具の理想的な姿なんですよね。
三越百貨店の家具売り場の中にある、「吉蔵」の家具を見て思う。
李朝の美にすっかり魅せられて、 日本人の李朝家具を創作したいと燃えていたあの頃。
夢見る男は、時代に惑わされることなく、
自分の抱いた家具の夢を、追い続けることが出来るだろうか?
(画像は「夢見る家具展」図録から借用しました。)
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