素晴らしい厨子が出来上がりました。 八角形をした屋根のある八面体厨子、夢殿型。 法隆寺の夢殿を模した、たいへん人気のある伝統的な厨子です。
八角厨子(夢殿型) サイズ・間口22×奥行22×高さ39cm 内寸・間口14×奥行14×高さ24cm 材質・国産欅(けやき)材 塗装・摺り漆 価格・286,000円
数十年もの間、私の父の代から我が社の家具の製作を担当してくれている職人N氏。 もう大分前、彼がこつこつと時間の合間になにやら厨子を製作しているようでした。 「こういう厨子を作ってみたよ。どうだろう?」 彼が示した厨子は、高さ40cmに満たない、伝統的な八角小厨子。 私は新しいタイプの厨子に夢中で、当初はそれ程魅力を感じませんでした。 ところが、素朴な「欅小厨子」と同様、 展示会で展示するとたいへん注目され、話題になりました。 それもそのはず、知り合いの腕のいい工芸家の多くが、夢殿型の厨子を作っているのです。 前田南斎氏の名品「島桑八角夢殿厨子」(佐野美術館蔵)を筆頭に、 いくつかの八角厨子を見て、私もだんだんその姿に魅了されていきました。 さて、今回再登場した弊社の八角厨子。 いくつかの改良を加て、完成度の高い厨子に仕上がりました。
・ゆったりと仏像やたいせつな品を納める事が出来るよう、高さを3cm高くしました。 そして、間延びすることのないよう、上部に透かしの幕板を設けてあります。
・出来るだけ木のよさを生かすため、金物の丁番を止め、木製の軸づりを使用しました。
残念ながら、木部は良くても金具がお粗末で、不釣り合いの厨子をよく見かけます。
・もちろん、屋根は一枚板。ここがN氏が独自の技術で開発した、最高の見所です。
厚さ7cmの欅の板を、型板を作ってくり抜いていくのです。
八角の屋根が生まれるなんて、想像できない型板のかたちなので、びっくり。
擬宝珠(ぎぼし)を中心に渦を巻いて流れる欅の木目は、めったにない貴重品です。
・天を指す擬宝珠は、専門の刳り物師が製作したため、たいへん納まりよく調和してます。
欅材に最も相応しい摺り漆の仕上げ、こちらも専門の塗師にお願いしました。
先日のギフトショーに初お目見え。 今風の「掌(たなごころ)厨子」と対極的な、伝統工芸品「八角厨子」。 ブースに並ぶ厨子の中でも、ひときわ目に付き、好評でした。
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